導入事例

2022/11/22

Wright Flyer Studios、グリーアドバタイジングが実践する、SKAdNetworkを活用したこれからの広告運用とは

株式会社WFS Marketing部 シニアマネージャー・シニアマーケター
加藤 耕輔
Wright Flyer Studiosが配信するゲームのマーケティングプロモーションを担当。過去にはアイドルゲームの運営プロデューサー経験も。
愛知県出身。
好きな食べ物:カレーライス
グリーアドバタイジング株式会社 エージェンシー事業本部 マーケティング部
新里 琴美
主にグリーグループやゲーム企業様の広告運用を担当。
神奈川県出身。ペットのウサギ(ネザーランドドワーフ)をこよなく愛する。
好きな食べ物:クリームシチュー
株式会社ファンコミュニケーションズ ADプラットフォーム事業部 営業推進部 部長
牛窪 道久
nendにて広告主営業もメディア営業も行うバリバリのプレイングマネージャー。
埼玉出身。新里さんと同じくウサギ(ネザーランドドワーフ)を飼育。
好きな食べ物:牛丼

今回は、『ヘブンバーンズレッド』や『アナザーエデン 時空を超える猫』などのゲームアプリでお馴染みの株式会社WFSのゲームブランド「Wright Flyer Studios」様と、グループ会社で代理店のグリーアドバタイジング(以下、GAI)様にSKAdNetwork(以下、SKAN)を活用した広告運用についてお伺いしていきます。
SKANを採用するまでの経緯や、広告運用における考え方はとても参考になり、必読です!

グループ連携でのSKAdNetworkナレッジ共有

牛窪:今日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、SKANに関してのお考えや対応状況を教えていただけますか。

SKAdNetwork対応について話すWFS加藤様

加藤様(以下、加藤):企業がお客様のプライバシーとどう向き合うかというのは、数年前から議論されてきたポイントですよね。特にデジタルマーケの領域ではCookieルールの変化もあり、モバイル環境における広告ID関連のルールが変わることは、ほとんどのデジタルマーケターが想定していたと思っています。
そのような中で、ATTの義務化は想定していましたが、評価ソリューションとしてSKANのような仕様で提供されることは想定していなかったので、発表当初は社内で議論を重ねました。
もう既にほぼそういう状態と言えますが、近い未来、SKANに対応してないとiOSでは出稿を見送るネットワークがでてくる世界観になってきているなと感じます。現在iOSの広告指標については、SKANに対応しているネットワークは基本的にSKANを活用しています。

牛窪:ありがとうございます。新里さんはいかがですか?

新里様(以下、新里):デジタルマーケティングにおけるプライバシーの重要度がより高まってきている世界的な流れの中で、ユーザーのプライバシーを保護しながらモバイルマーケティングを継続していくために、SKANのような仕組みができたと理解しています。
しかしまだまだ進化の途中だとも感じています。アップデート情報を注視し、大きな変化があった場合でも迅速に対応し、最適なプロモーションができるよう各社様と連携をしながら体制を整えています。

牛窪:SKANを活用する広告主様の割合は増えてきていますか?

新里:増えてきています。広告主様のニーズに合わせて、弊社からSKAN指標で見てみませんかというご提案をすることが多いです。

牛窪:広告主様のSKANに関しての理解度も高まっているということもあるのでしょうか。

新里:そうですね。情報が増えてきたことや、nendさんのようにSKAN指標を推奨するネットワークがあることで、開始当初に比べると高まってきていると思います。

牛窪:なるほど。そんな中で、社内でSKAN関連の知見レベルにばらつきがあるという課題をお聞きすることがあります。SKANに関連した情報収集や社内でのナレッジ共有はどのように行っていますか?

SKAdNetworkの情報収集について話す、GAI社新里さん

新里:それは業界共通の課題だと思っています。
私たちのグループでは、広告評価のルール策定や分析まわりの整備を行う部隊を設置しています。また、新しいトピックに関しては、詳細な情報を把握するために同業界の企業様と情報交換をしながら解釈や理解の精度向上を行なっています。

加藤:グループ会社のデジタルマーケターが入ったチャットグループがあり、SKAN関連などデジタル系トピックのアップデート情報をシェアしていますよね。

新里:グループ内の各ゲーム会社からいろんなフィードバックや考えを集約して、グループ横断で各種方針を決定しています。

加藤:僕たちは、SKANを広告評価に活用していくにあたって、全員がSKANを100%理解していなくても運用がまわるレベルまで整えていくことが大事だと考えています。例えば、カットオフなどSKANの細かい仕様を全員が100%理解する必要はないと思っているので、グループ統一でルールを整えて、交通整理ができたらあとは運用を回していくだけという形にしています。

牛窪:とても効率的ですね!そうしたグループ全体の意志決定の際に、nendからの情報も参考になったりしていますか?

新里:します!します!弊社向けに勉強会も行っていただきましたし、nendさんのようなネットワーク企業の情報を判断材料にすることも多いです。

加藤:SKANをこう活用していくべきだという提案をくれるなど、nendさんはSKANに積極的に取り組んでいる印象があります。大手ネットワークでもこういう定義でやっていきますよというのはガイダンスとしてありましたが、活用方法は各社におまかせという印象だったので。

牛窪:ありがとうございます。nendではSKAN特化のチームがあり、そこで最新情報の収集や普及、SKANを活用した広告配信の運用、検証などを行っています。
Wright Flyer Studios様、GAI様のようにナレッジ共有から方針決定までのフローがきちんと整っていることは今後も重要になってきそうですね。

SKAdNetwork導入まで3段階の検証フェーズを用意

牛窪:Wright Flyer Studios様でSKANを導入するまでの経緯を教えていただけますか?

加藤:現在はSKANが普及してきたこともあり、nendさんを含め、SKANを中心にネットワークをプランニングしています。それまではいくつかのフェーズに分けて進めていきました。

フェーズ① 知る
まずは、SKAN対応のネットワークにて、既存の計測ツール(以下、MMP)の計測数値との乖離を見ました。
ポストバックまでの時間やカットオフなど、従来の計測とは異なる部分が多いため、広告評価のルールを作り変える必要があると認識し、ポイントを洗い出しました。

フェーズ② 計測の検証
次に、複数のネットワークで評価方法のパターンを何種類も組みました。
意志決定の数値としては使用せず、どのパターンが合理的かを検証していました。
このタイミングでは、あくまで検証にとどめていました。
理由は、まだSKAN対応しているネットワークが多くなかったことと、SKAN対応と非対応のネットワークを併用した時のコンバージョン(以下、CV)評価が難しいことです。
理論上、CVを重複して計測する可能性が高く、ある程度SKAN対応のネットワークが増えるまでは、SKANを活用しない判断をしました。

フェーズ③ ネットワークプランニングの検証
検証の中で様々な傾向が見えてきました。例えば、SKANの方がMMPよりもビュー経由のCVがつきやすいネットワークがあったりもします。
そうしたこれまでとは違う傾向や特性を見極め、価値評価をどう捉えていくか、どのように予算をアロケーションしていくか、じっくり考える必要がありました。

WFSによるSKAN導入までの3フェーズのイラスト

牛窪:なるほど。これまでばらばらだった広告評価の定義が統一されたり、ポストバックが遅くなったりと、SKANによる色んなルール変更によって、これまでとは違った傾向が見えてきたんですね。それを踏まえて方針を決めるのはとても重要ですよね。
3段階の検証を進めたとのことですが、かなり早い段階で検証を始められたんですね。

加藤:比較的、早かったとは思います。そのためにシミュレーションを色々していたので。
どの係数を出すのが一番現実的で納得感があるのか、いくつかのパターン出しから検証までのスピード感は早かった自信がありますね。

牛窪:そうした検証のおかげで現在、しっかりと活用できているんですね!

「面」を買い付ける意識が重要に

牛窪:では、実際に分析や運用はどのように行っているんですか?

加藤:投資回収期間を設けたROAS運用を行っています。

牛窪:グループ全体で評価方法を整えるというお話がありましたが、例えばコンバージョンバリューの組み合わせで細かいROASを追っていくというよりかは、運用の型を作って推定ROASで進めることで意志決定のスピードを優先しているということでしょうか?

加藤:そうですね。

牛窪:nendでは、きちんと計測できるように整備して、細かいROASの算出、運用を行っているケースも多々ありますが、やはり分析の難易度と意志決定のスピードは課題だと感じています。時間による機会損失を考えると、ある程度の型を作って運用していくというやり方が今後のスタンダードになっていく可能性はありますよね。

これからの広告運用について話すWFS社加藤様

加藤:「完璧には見えない」ということを前提に投資をしていかなければならないフェーズに入ってきているんだなというのは感じているので、弊社ではその方向でもチャレンジしています。
これまでは「面」から「人」へという大きな流れがありましたが、「人」の情報がほとんど無くなった中で「面」に回帰して評価していくべきだとも感じています。

牛窪:僕もSKANが出たときに全く同じことを思いました!(笑)
細かく「人」をターゲティングしてというよりかは、どの配信面にゲームを遊んでくれるユーザーがいるかとかそういう考え方ですよね。

加藤:まさにその括りで考えることの方が多いですね。
「この配信面のこの広告枠に出したいよね」というところから、その広告枠に出ている広告のインフォメーションボタンからネットワークを確認して、どうやって広告配信していくか、どう入札調整していくか…と議論が始まっていくことも多いです。
まあ、結局は「人」を想定した上での考え方ではあるのですが、配信面を買いに行くという意識はめちゃめちゃ強くなっていますね。
そのため、nendさんのようなアドネットワークの重要度が高まっていくと思っています。

新里:Wright Flyer Studiosでは、1インプレッションの価値を重視するため、ビューアビリティが担保される動画リワード広告にも積極的に取り組んでいますよね。

牛窪:1インプレッションを大切に、ユーザーの趣味嗜好やライフスタイルを想定して配信面を買いに行く、とてもシンプルでとても重要ですよね。
今回、nendをご導入いただいた経緯はそうしたお考えもあってということですか?

加藤:そうですね。動画リワードによるすり込みってかなり強いと思っています。なので動画リワードが強いイメージだった外資系ネットワークでも、SKAN×動画リワードでの配信を実施したのですが、思っているような結果を残せませんでした。
そこで国内事業者に目を向けたときに、我々はゲーム内広告なども実装しているのですが、nendさんは1番メディア営業をしっかりやられている印象があり、保有アプリの質やビューアビリティも高いこと、かつSKANに対しても積極的に取り組まれていること、ホワイトリストができることなどが決め手となり、実施させていただきました。

新里:SKANや運用面でのサポートが強いこともポイントでしたよね。

牛窪:ありがとうございます!実施してみていかがでしたか?

加藤:他と比較しても、配信量、効果ともにパフォーマンスをしっかり出せていたので、長期で続けていくべきという判断になりました。

nendを利用した感想を話すWFS加藤様、GAI新里様

新里:代理店としても、日頃からの密な連携とすり合わせで細かな調整が実現でき、安心して配信することができました。
結果として、獲得単価が特に良い結果となっています。ホワイトリスト配信や、配信枠に合わせたクリエイティブサイズの検証の提案など積極的に効果向上に取り組んでいただき、長期に渡りKPIに沿った配信ができております。
また、SKANダッシュボードも見やすく管理しやすいので助かっています。

牛窪:新里さんとは配信開始直後はしょっちゅう電話してましたよね(笑)
現在、運用面で課題に感じていることはありますか?

加藤:SKANでは、CVポストバックに「redownload」が含まれますが、新規インストールと再インストールをどのように評価するかが難しいですね。

牛窪:なるほど。今だとまだ再インストールがポストバックで戻ってくることをご存じない広告主様も少なくないように感じます。

加藤:新規インストールと再インストールは、それぞれで打ち出したい訴求軸が異なるし、マーケティングコストのかけ方としてそもそも違います。
ですが、現状だとネットワークによっては、同じCVとして戻ってきたりします。長期タイトルでは再インストールも多くなりますし、本来は評価の重み付けなどをしていくべきですが、正直すごく難しいなと感じています。

牛窪:今、エンドポイントを活用して、全ネットワークのCV内訳を把握することは仕組み上可能ですが、ニーズはありそうでしょうか?

加藤:非開示なのは一部のネットワークなので、ケースバイケースかと思います。

今後について

牛窪:アプリマーケティングや広告計測についてどういった未来を描いているのか、今後の方針と合わせてそれぞれお聞かせください。

新里:プライバシー意識の高まりに伴い、SKAN対応の重要性はより増していくと考えていますし、まだうまく活用できていない企業は早急に対応せざるを得なくなっていくのではないでしょうか。
これまでの課題であった、各ネットワークによる計測定義の差についてもSKANで解決に近づいていくと感じています。その中で、広告主様がより良いマーケティングができるよう、常に最新の情報を取得してまいります。
弊社では、変化する時代の中で単なる代理店機能だけでなく、クライアント様の内部KPI管理などより深い構造サポートに注力していきたいです。
加藤さんも仰っている通り、見えない不確定要素に時間を費やすことで、スピーディーなPDCAサイクルを阻害してしまっているケースも少なくありません。そのようなクライアント様に対して、弊社のナレッジをどんどんお役立ていただきたいと考えています。

牛窪:ありがとうございます。SKANの重要性が高まっていくというのは、同意見です。そのあたりはnendのSKAN専属チームが今後もお役に立てればと思っています。
加藤さんはいかがですか?

加藤:より大きな話になりますが、個人的には、お客様目線で見たときの広告体験をより良くしていきたい気持ちはありますね。
例えば、ゲーム攻略サイトを見る中で、ゲームに全く関係ないもので、かつ不快になるような広告が出てきたりするじゃないですか。こういうのって広告体験としても、ゲーム体験としても、良くないなと思っています。ブランド観点からも好ましくないですよね。
理想を言えば、自分たちのゲームをプレイしてくださるお客様が触れる広告枠を良質なクリエイティブで埋めていけたらいいなと思います。そのため、そういった広告枠には、CPMを多少上げても配信を強めたり、広告主としてもその辺を頑張っていきたいなと思っています。
配信面がクリーンになるとアドネットワークの価値はより高まるので、nendさんにはそういったところを期待しています。

牛窪:ありがとうございます。僕も個人的には出てくる広告によってメディアの質が変わってくると思っているので、パートナーメディアさんのためにも広告体験の改善に取り組んでいます。
近々SKANでもwebの配信面の計測が可能になることに加え、日本ではまだまだwebのトラフィックが多いので、web配信面×ゲーム好きな人が集まるメディア×動画広告フォーマットのかけ合わせでしっかり良い配信面を拡大していきたいなと思っています。
アドネットワークとして、今後も末永くお力添えさせてください!

本日はありがとうございました!

nend牛窪、GAI新里様、WFS加藤様

今回取材したお客さま

株式会社WFS

2014年設立。「新しい驚きを、世界中の人へ。」のビジョンのもと、ゲームの開発・運営を行う。代表作として『消滅都市』や『アナザーエデン 時空を超える猫』、2022年2月にKey麻枝 准氏が原作・シナリオを担当した『ヘブンバーンズレッド』をリリース。

今回取材したお客さま

グリーアドバタイジング株式会社

1996年設立。広告代理事業やメディアレップ事業を行う。
ソーシャルメディアや動画広告だけでなく、海外展開のサポートやマーケティングソリューションを提供する。

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