ノウハウ

2022/06/22

SKAdNetworkとMMPの計測数値が違う!
違いが起きる理由と背景

これまでは、SKAdNetworkの仕組みやコンバージョンバリューについて基礎知識をお伝えしてきましたが、今回はより実践的なトピックである「SKAdNetworkとMMPの計測数値の違い」についてお話します。

増えつつあるSKAdNetworkの利用

2018年に発表されたSKAdNetwork(以下、SKAN、読み方はスキャン)ですが、当初はIDFAが機能していたのであまり普及しませんでした。その後、2021年にATTが対応必須となり、大手プラットフォームが広告効果計測をSKAN計測のみとする方針を相次いで表明しました。これによりSKAN対応を急いだ企業様も多いのではないでしょうか。nendにおいてもSKAN計測の事例が徐々に増えてきています。

しかし、SKAN計測のみで広告運用している広告主様は一部のみに留まり、広告効果計測ツール(以下、MMP)を併用しているケースが多い状況です。
それでは、まずSKANとMMPとの併用について整理してみましょう。

SKAdNetworkとMMPの併用について

2つの異なる計測ツールを併用する大きな理由として、SKANでは現状ウェブサイト(以下、web)の広告効果計測ができない(記事執筆2022年6月現在)ということが挙げられます。特にweb配信面で広告効果が良好な場合などには、web配信面はMMPで計測し、アプリ配信面はSKANで計測するというように併用が必要となります。

また、併用することで両者の計測数値の比較が可能という理由もあります。それぞれの計測ツールの数値を相互比較することで、計測の抜け漏れなどがあれば原因の究明や設定のチューニングを行うことができます。また得られる情報が限定的なSKANをより上手く活用するために、MMP計測で得られる情報をSKANの設定や運用に活かすということも可能です。

しかし、SKANとMMPを併用する場合にはいくつか注意すべき点があります。

まずひとつめは、web配信面とアプリ配信面でのコンバージョン(以下、CV)の重複です。例えば、マンガアプリ内で広告を見たユーザーが、その後webのニュースサイトを閲覧している時に、マンガアプリで見たものと同じ広告をクリックしてCV(インストール)したとします。MMPではラストクリックが発生したwebのニュースサイトでCVがカウントされますが、SKANではweb計測ができないので、広告が視聴されたマンガアプリでCVの成果がカウントされます。1件のCVが全体で見ると別々のCVのように見えてしまうのです。
ユーザー獲得を主軸に置くダイレクトレスポンス型の広告では、CVの重複を可能な限り省かなければ無駄なコストが蓄積します。そのため、このような重複CVが発生することを考慮してKPIやプロモーション環境を設定する必要があります。

そしてふたつめが、今回のテーマであるSKANとMMPの計測数値の違いです。両者の数値が合致せず、大きくかけ離れている(特にSKANの計測数値が大きくなる)という話は、特に成果評価の側面で、多くの広告主様からお聞きします。

そもそも、どうして計測数値に違いが生じるのでしょうか。

レポートを比較する男性

計測数値の違いはなぜ起きるの?

では、ここでnendの過去実績から3つの事例を見てみましょう。
事例①〜③はそれぞれ計測数値に違いが生じており、いずれもSKAN計測の成果数値の方がMMPのものよりも大きくなっています。CVの件数を見ると、事例①は約2倍、事例②は約7倍、事例③に至っては125倍もの違いが生まれています。
こうした違いが起きる要因を考えていきましょう。

理由①計測の仕組みの違い
まず第一に、SKANとMMPの計測方法がどのように異なるかを理解する必要があります。SKANは端末情報を利用せずにCV計測を行います。一方で、MMPはIDFAなどの識別子や端末情報を利用してCV計測を行っています。

現在、MMPでIDFA計測ができるのは、「プロモーションを行うアプリ」と「配信面のアプリ」の両方においてIDFAの取得を許諾(オプトイン)している場合のみとなります。

nendのデータでは、配信面アプリにおけるユーザーのオプトイン率が約30%です。仮にプロモーションを行うアプリでの許諾率が同様に30%の場合には、双方のアプリでオプトインするユーザーの割合は30%×30%=9%となります。つまり、MMPでIDFA計測できるのはプロモーションで獲得した全ユーザーの1割に満たないということです。
この場合には、SKANとMMPで計測母数が大きく異なるので、CV数値にも大きな違いが生まれます。(事例③)
MMPでの仕様や設定によって、フィンガープリンティングやプロバビリスティック(確率論的)計測が実施される場合もありますが、SKANとは計測方法が異なるので、この場合にもCV数値やユーザー獲得金額 (eCPI、eCPA) に違いが生じます。

理由②SKAN計測のタイムラグ
SKAN計測のポストバックはリアルタイムではないという点も要因のひとつです。プロモーションを行うアプリでのカットオフの仕様などにもよりますが、一般的にSKANのポストバックは、CVを行ったユーザーがインストール起動してから、24~48時間以降に返ってきます。このタイムラグはCVユーザーの特定を困難にし、ユーザープライバシーを守るために必ず発生します。
そのため、このタイムラグを考慮したうえで、数値を比較することが重要です。これまでデイリー単位でCV数値や獲得単価を評価していた場合は、評価期間を長くして、1週間~数週間単位で数値を見ることをおすすめします。

理由③再ダウンロードのカウントの違い
SKANでは再ダウンロードという、AppStoreを運営するAppleならではの獲得指標があります。Apple IDをベースに判定する獲得指標で、CV(インストール起動)を行ったユーザーが過去に同じApple IDでそのアプリをダウンロードしたことがある場合に「再ダウンロード」としてCVをカウントします。
例えば、iPhoneユーザーが新しいiPhoneに買い替えて、古いiPhoneで使っていた同じアプリを同じApple IDでインストールする場合、「再ダウンロード」CVとしてカウントされます。MMP計測では、Apple IDではなく、端末の情報ベースにCVカウントを行うので、この例では「新規」CVとしてカウントされます。
また、リエンゲージ施策(アプリを削除していないユーザーを復帰目的でリターゲティングしてアプリの使用を促すマーケティング)の場合、ユーザーがアプリをインストールするという工程が発生しないため、SKANではCV成果になりません。

理由④SKAN対応していない広告ネットワークの利用
さらには、SKANに対応していない広告ネットワークの利用も要因として挙げられます。(事例①)
例えば、ある広告主がSKAN対応の広告ネットワークAと、非対応の広告ネットワークBを利用していたとします。ユーザーがマンガアプリ内でAの広告をクリックしましたが、インストールは行わず、その後に同じマンガアプリ内でBが配信する広告をクリックして、インストールしたとします。SKANとMMPでは成果CVが以下のように計測されます。

■SKAN
A:CV1件

■MMP
B:CV1件

SKANもMMPもラストクリックの原則を採用していますが、SKAN非対応の広告ネットワークBを使うことで、同一ユーザーのCVカウントを重複して計上してしまう場合があります。このような現象は、評価の基準を一つの計測方法に統一すれば防ぐことができます。SKAN計測を行う場合には、広告配信を行うネットワークがSKANに対応しているかどうかをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

理由⑤計測定義の違い
また、広告効果を計測する際の定義(ルール)の違いも大きな要因として考えられます。(事例②)
MMPにおける計測定義は、各広告ネットワークに委ねられており、統一ではありません。例えば、あるネットワークではビューの定義(ビューとしてカウントする条件)が「動画広告の視聴完了(動画広告をすべて視聴したらビューとして発火する)」でも、別のネットワークでは「3秒の視聴」だったり、はたまた「1秒」だったりします。
クリックの定義も同様で、広告ネットワークによってはビューをクリックとしてカウントする(実際にはクリックしていないのに、視聴されたらクリックとして発火する)定義にしているケースもあります。
しかし、SKAN計測では3秒以上の視聴でなければビューとみなさないルールがあります。そのため、前述のような本質的ではないアトリビューションはカウントされにくいしくみになっています。こうした計測定義の違いによって、計測数値にも大きな違いが生じているのです。

 

このようにSKANとMMPの数値の違いの背景にはたくさんの事象が複雑に存在します。
今回挙げたものがすべてではありませんが、ひとつひとつ理解しておくことが重要になってきます。

まとめ

今回は、SKANとMMPの計測数値の違いについて、5つの要因をご紹介しました。

①計測の仕組みの違い
②SKAN計測のタイムラグ
③再ダウンロードのカウントの違い
④SKAN対応していない広告ネットワークの利用
⑤計測定義の違い

プロモーションをするうえで、見るべき数値が複数あり、しかもその数値に違いがあるとなると、どちらをどの程度参考にするべきかとても難しいですよね。
本当に効果のある広告ネットワークに適切な予算分配ができなければ、機会損失にもつながりかねません。

理由①でも述べたように、iOSにおいてMMPでIDFA計測ができるのは「IDFA取得に許諾したユーザーのみ」です。フィンガープリンティングやプロバビリスティック計測も、今後のiOSのアップデート次第では利用を継続できるかどうか不透明です。今からSKANの環境を整えておけば、今後プライバシー保護関連の制約がより厳しくなったとしても影響が少なく、競合他社に優位性を保持できます。
また、SNSや大手プラットフォーマーは既にSKAN計測のみとなっているので、それらと計測をそろえるという点でも大きな意味があります。利用する広告ネットワーク間で重複CVなく、横並びでシンプルな効果比較や運用が可能となります。そのため、アプリの配信面に関しては、SKANに統一していくことをおすすめします。今のうちから準備をして、MMPの計測数値と比較しながら自社に合ったSKANの設定を確立していきましょう。

webにおいては、まだ普及はしていませんが、AppleがPCMという機能を発表しています。また、先日のWWDC22(Appleの世界開発者会議)ではSKANをweb配信面にも適用していく方針が明らかになりました。

今後、どのように新しい広告効果計測のルールが確立されていくのか、市場の動向を早い段階でキャッチし、自社の方針を判断する準備をしておきましょう。
nendでは市場の流れや傾向をふまえつつ、広告主様のご状況に合ったご提案が可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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